過去のツーポイント関連のブログをまとめて載せています。
ツーポイントを作る過程や、レンズの型を変えて作る場合のやり方などを紹介しています。
縁無しフレームの作り方 その一(フチナシメガネが出来るまで)
どうやって縁無しが出来るのかを流れ程度ですが紹介してようかと思います。
まず、発注して届いたレンズは画像のようにまん丸です。
レンズをフレームの形に合わせて削る為に必要なのが、フレームの下に置いてある型板です。
型板は縁無しフレームと、糸でレンズを釣っているナイロールフレームには必須です。
これを使って、まずは加工機でレンズを削ってきます。
フレームのダミーレンズと削ったレンズに水平線を引き、メガネを作る基準にします。
水平線を引いたレンズには、必ずレンズ保護と線が消えないようにテーピングします。
特にこれから穴を開けるレンズの水平線は非常に重要です。
水平が狂うと形が崩れたり、見え方が悪くなったりしてしまうために、縁なしフレームを作る上で一番気を使います。
レンズの水平線は遠近なら隠しマークを、単焦点なら乱視軸を基準に引きます。
単焦点の場合、乱視がなかったり、単性乱視だった時はレンズを削る前に引いておき、消えないようにします。
フレームのダミーレンズに引いた水平線は、作る参考程度にします。
なぜなら型板の水平線と結構なズレが出るためです.
同じ理由で、ダミーレンズに空いている穴位置も参考程度にしか使いません。
結構ずれてますので、ダミーを信じて作ると失敗します。
フレームの水平線とレンズの水平線を参考にしながらレンズに穴を開ける場所を決め、決めたポイントに印点をしてドリルで穴を開けます。
その際、お客様のお顔のフィッティングデータに合わせてフレームが出来るように、穴の角度を変えてレンズの傾斜角やテンプル幅を調整しながら穴を開けます。
穴明けは手作業です。両手が塞がるのでドリルの写真のみ
穴を開けて、組み立てて見たところ
完成品のバランスを確認中
かなり大雑把ですが、流れを追ってくとこんな感じで縁なしは出来ます。
大体所要時間は25~30分程度かな?
普通の加工が5~10分前後なので、2~3倍くらい時間と手間がかかります。
作ってる方は楽しんで作っていますが、沢山売れると時間が足りないかも知れません。
縁なしはレンズの形もかなり自由に変更出来るので、「こんな形に出来ないか」「この形をこっちのメガネに」など、お客様のご希望に沿って製作が可能です。
また、持込フレームも受けていますので、家に眠っている縁無しフレームがあれば、一度使えるかどうかのご相談にご持参下さい。
縁無しフレームの作り方 その二(玉型変更のやり方)
形を変えたいというお客様の要望でレンズの形を変えてみます。
形を変えるフレームはこちらのRODENSTOCKの枠無し
これをかなり大きくして欲しいとの要望。
お客様のPD(眼幅)と顔幅を考慮してサイズ61 上下は39で形を考える。
ある程度の形を考え終わったら、道具を用意して玉型造り開始。
型板に形を書いて、ハサミで切ってヤスリで削ること10分・・・
出来た!と思ってフレームに合わせたら水平がずれる・・・ 作り直し。
二度目は水平もズレず、サイズも上手く出来ました。
出来もまずまず。
並べて置くと、どれだけ大きくしたか分かりますね。
製作過程はその①とあまり変わらないので省略。
こんな感じになります。
フレームによっては形を変えられないものもありますが、
割と自由に変更出来る場合が多いです。
家に眠っている大きい枠無しフレームや、フレームのデザインは好きだけどレンズの形が嫌いなど、
ご要望によって型板変更致します。
ツーポイントフレームの型変更 ①
元レンズを基準に全体的に丸みが出るように変えて欲しいという相談で型を起こしました。
フレームはシャルマンラインアートXL1046 サイズ52□16
お顔が小さく、度数もある方なのでレンズサイズも52→50になるようにして、上下も3mmほど増やしてあります。
一度ダミーレンズで型を作ったものを見てもらい、OKが出たのでレンズを注文して製作。
枠無しレンズと超低反射コート(NRC)の相性が抜群なので、お客様にオススメしてあります。
フレームの金具などによっては、型の制約が厳しい場合もありますが、結構変化を付けることが出来ます。
ツーポイントフレームの型変更 ②
原型から大幅に型を変えたツーポイントを作りました。
お客様希望は、今使っている丸型ツーポイントに近い形で作って欲しいという内容でした。
問題はフレームのほうで、基本の形はスクエアです。
形を変えるに当たって、あまり弄れない金具の角度に対してレンズを合わせるのが制約になります。
面が平ら系の4角形から5角形、6角形といったように変えるのは難しくないですが、4角形から丸型などに変更するのは難しかったりします。
ちなみに、レンズ止め金具に制約が無いツーポイントだと、ほぼどんな形にでも自由自在に変更出来て楽です。
たとえば、こちらのフーガなどは分かり易いですね。
それではレンズの水平を維持しつつ、丸型でも金具がうまく止まる位置や角度を考えながら型板を作っていきます。
左がお客様ご持参の丸型ほぼ合わせた原型と、右が何度か試作して作った型板です。
ただ型板だけでの調整は不可能だったので、お客様に許可を貰って真ん中のブリッチを少し曲げ直してあります。
後日、試作した型で組み上げたフレームをお客様に確認して貰い、修正ポイントがあれば再度修正していきます。
今回はほぼ希望通りにいったようで、そのまま遠近のアイポイントを取ってレンズ注文をしました。
あとは届いたレンズで本物を作るだけです。
サイズを大きくしたり、下を伸ばす角を丸めるなどのちょっとした変更は通常納期でほぼ仕上がります。
今回のように、原型からかなり型を変える場合は、試作して確認して貰ったりする為に通常より時間を頂いております。
特に遠近両用レンズの場合はまず試作が出来ないと、レンズ本来の性能を100%発揮する設定で計測が出来ない関係上、通常7~10日の所、試作に数日、確認後にレンズ注文という工程が入ります。
その結果、通常より5~10日は製作日数が増えるのでご注意下さい。
フレームは気に入っているが形が今に合わないと言った相談でも、対応出来る場合がございます。
ツーポイントフレームの型変更 ③
今回作ったツーポイントはフーガ 6015
お客様の希望で型を変更しています。
元の形はこちら (同型の色違いで比較)
フーガは穴を開けて樹脂ピンと、横の刻みで固定するのでレンズの型を変えるのが自由自在に出来ます。
今回はお持ちのフレームの形に近づけて欲しいとのご要望で、オーバルに型変しました。
このタイプは丸でも四角でも、どんな形にも変えられるので面白いです。
ツーポイントのレンズに色を入れると、一味変わった見栄えになります。
枠無しメガネレンズとレンズカラーの相性は抜群です。
レンズに色が入ることで、全体の輪郭が出てきます。
レンズのカラー濃度が10%程度でも、枠無しの場合はしっかり色感が出てきます。
レンズのコバを磨いておくと、このようにコバに色が出てきて非常に綺麗なのでオススメです。
メガネの色と形による印象の変化
同じフレームでも、フレームカラーとレンズの形でメガネのイメージは大きく変化します。
違いが分かりやすいように、レンズの形を変えれるナイロール(ハーフリム)とツーポイント(縁なし)メガネで比較してみました。
この二つ、品番は違いますが金属部分の形状は同じです。
違うのはカラーとレンズの形だけ。
上は色がシルバーで明るくなり、四角系ながら角は丸くなっているので少し柔らかな印象になります。
下は色が濃くクッキリ引き締まり、形が角ばって上下の縦幅が短くなっている為にシャープな印象が出てます。
ツーポイントフレームは枠の制約はほぼ無い為、レンズの形を大胆に変化させることも出来てオススメです。
次にナイロールフレームで同じように違いを見てみます。
ナイロールは表面の金属部分がツーポイントより見えるので、違いもより出てきます。
今度はシルバーを角ばらせて、色の濃いほうを丸めてみました。
フレームラインが下がっていますが、レンズを角ばらせることでカッチリした印象に変わります。
逆に色が濃いフレームだとフレームラインが浮き出つつ、レンズもオーバル型なので下がった印象が強く出ます。
このように、フレームの色や形で受ける印象がかなり変化します。
特に顔周りは、表情に代表されるようにちょっとした変化がダイレクトに印象として認識されます。
極端な話で言えば、ホクロの有無やその位置が変わっただけで印象もガラリと変化します。
常に使うことを前提としてメガネは、他のアクセサリー類より面積が広く印象を変える力を持っていると言えるでしょう。
メガネもオシャレとして掛け換えたり、ちょっとしたところに拘ったりして楽しんでみては如何でしょうか。
形だけでなく、人それぞれ輪郭や目の幅も違うので、お客様に合ったフレームを提案させて頂いております。
久々に酷い作りのメガネを見ました。(ツーポイント編)
メガネのなかむらでは、メガネ一式での販売は勿論、持ち込み枠でのレンズ交換なども承っております。
加工の多くは、ほかの店舗から加工依頼として筆者の手元に回ってきます。
この持ち込みフレームのレンズ交換ですが、作る側としては毎回悩みながら作っています。
何故かというと、、、
こんな感じになってるメガネがあったりするからです。
(ネジワッシャーなど、消耗部品が曲がっていたりすると正確な形が分からないので、先にある程度の型直しと分解整備をしてあります。)
見て分かると思いますが、明らかにおかしく感じますよね。
今回のメガネは遠近両用レンズが入っていたので、分かり易く隠しマークを使って水平線を引いてみました。
この水平線が綺麗に水平になっていると、遠近両用として正常に機能していると言えます。
逆に水平が狂っている場合は、本来のレンズとしての機能を正しく生かし切れていない状態となっています。
今回の持ち込みメガネは、この水平線がかなり傾いてるのが見て分かると思います。
水平がズレているので最も軽度なのが型崩れしている場合。
型崩れが原因の時は、水平になるように型直しすることで元に戻ります。
フレームが変形してしまっている型崩れ等なら、破損のリスクがありますが型直しすればお使い頂けます。
この場合の難易度=破損せずにフレームが直るかどうかなので、再製作上の難易度は低めです。
※ 状態の悪いフレームのなどの製作、修正時にはフレームが破損する恐れがございます。
その際の責任は負いかねますので、メーカー修理費などが発生した場合はお客様ご負担となることをご了承頂いてから、製作をお受けしております。
中度~重度なのが穴位置が悪くてズレてる場合と、レンズを削る段階でズレてる場合。
基本的にレンズには左右対称の穴位置を空けますが、これが0.2mmほどズレると水平がずれてきます。
0.5mm以内のズレなら加工中の穴の微調整で直りますが、1.0mm以上失敗していると穴の調整では難しくなってきます。
1.0mm以上の穴位置修正はどこかに絶対無理が出てくるので、筆者の場合はここをミスったら即レンズを再注文します。
穴位置のズレで水平が合わなくなってくると、水平を合わせる為にフレームを曲げたりして他の穴位置をズラしたりして調整してしまう場合があります。
この場合にはレンズ水平はあっているがフレームが若干型崩れして見えるというパターンが発生します。
このような状態でも、とりあえず基本となるレンズの水平は合わせて作られているので、見え方に大きな不具合が出にくいです。
基本となるレンズさえちゃんと左右対称に同じ形で水平が揃うよう削られていれば、元レンズを基準に正常な状態に作り直すことが出来ます。
再製作難易度も、理想とする基本となった形として作り直せる確立が高いのでそこまで高くありません。
というか持ち込みフレームでは結構な確率で当たる為、割と気軽に請け負っております。
いよいよ今回のパターンですが、そもそも左右対称に削られていません。
しかもそのレンズで無理やり作っている為、全てがおかしくなっています。
基本的にレンズを交換してフレームの型直しをしないと治せないので、最も酷い重度と言えます。
加工中に、何らかのトラブルで水平はズレることはあります。
このズレは上がって来た段階で見てすぐ分かるので、まともな所だと即再注を掛けて作り直します。
最悪でも、穴位置で何とかしようとする努力の跡みたいな物があったりするものですが、それも見受けられません。
フレームがあんまり型崩れしていない所を見ても、フレームで水平を直そうとした痕跡も無いという事です。
ここまで酷いメガネの作りは、久々を通り越して初めて見ました。
これだとレンズの度数が合っていても、ちゃんとした遠近両用の見え方になりません。
このメガネ再製作時に問題になるのが、正確な基準になる元の型板が無いという事です。
元レンズから狂っているので、このフレーム本来の形を割り出す基準が無く、正解の形が分かりません。
なので元となる型板から作っていきます。
※ 両方ともレンズが粉々に割れていたり、そもそもレンズが無くフレームのみの持ち込みなどは作成上のリスクが高い為、基本お断りさせて頂いております。
(メーカー付属の加工用型板が付いていたり、当店で作ったことがあるフレームは除く)
ぱっと見、元の形はこっちのほうが近いだろうと思われる右レンズ(写真だと左側)を基準に型を考えます。
お客様の希望で、元のレンズより上下をもうちょっと延ばして欲しいとのことなので、それを踏まえて作ります。
型を作ったら、一度ダミーレンズで試作してみて、ちゃんと出来るか確認します。
2ヶ所の穴明けだけでなく、レンズの横に更に2ヶ所の刻みを入れる今回のフレームのようなタイプは、ツーポイントの中では作りにくい部類になります。
刻みを入れるのが厄介で、刻みは修正が効かない上に、ここがズレると見栄えやレンズの水平など全部狂うので慎重に合わせます。
左右対称の穴位置を空け終わったら、レンズの水平を基準にフレームの細かい型崩れなども直しつつ微調整しておきます。
テンプル幅や傾斜、水平ラインの位置や全体のバランスなどを確認して作ります。
水平がズレると、乱視の軸や遠近の測定データ全てが狂ってしまう為、水平線が合っているのが絶対条件です。
何度を見直しながら、しつこいくらい型崩れなどを微調整していきます。
試作が完了したメガネは一度お客様に確認して頂き、さらにフィッティングをしてアイポイントを取ります。
ここまでしてから初めて遠近のレンズ注文に移れます。
最近の高価格遠近両用レンズは、フレームの形状なども測定してから注文するようになっている為、フレームがしっかり出来ていないと全てが狂ってしまいます。
一週間後、注文していたレンズが届いたら本番の製作に入ります。
今回は型興し&フレームの型直しを兼ねて一回、微調整後の最終確認に一回の計2回ほど試作しました。
ここまでの下準備が大変なだけで、実は本番を作るのは試作で練習している分、普段より気楽に作ることが出来たりします。
さくっと作って完成です。
型崩れしていたり、片方のレンズが割れていてもフレームが使えることがあります。
愛着があるフレームを使ってレンズ交換がしたいなどがあれば、一度ご相談下さい。